百年先、千年先へ、いのちを守る森の防潮堤を

人間の予測をはるかに超える自然の猛威を見せつけられた東日本大震災では、多くの尊いいのちと財産が失われました。大津波に対して、本来いのちを守るはずのコンクリート防潮堤の多くは決壊し、アカマツの防潮林もほとんどが機能せず、根こそぎ倒れ、流木化してしまったのです。
輪王寺では、以前より森づくりを実践してきました。この知恵を、経験を、復興支援に、そして未来のいのちを守るために役立てられないだろうか。その思いから、輪王寺の森づくりにも尽力いただいた横浜国立大学名誉教授・宮脇昭氏が提唱する「いのちを守る森の防潮堤」構想に賛同。2011年7月31日に発足した「いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会(現・森の防潮堤協会)」の一員として名を連ね、活動を推進することとしました。

祈り1
祈り2
祈り3

森の強い生命力は、やがて私たちを守ってくれる。

私たちがめざす「いのちを守る森の防潮堤」は、まずは沿岸部に被災瓦礫と土を混ぜ埋め、盛り土して高台をつくる。その上で、海岸線に生えるべきさまざまな土地本来の樹木を植樹し、森の力を再生しようとするものです。
それは、未来のいのちと財産と心を守る活動であり、多層群落からなる森は、まさに「生命の塊」です。植物、動物、微生物が複雑かつ密接につながり、全体のバランスが保たれ、強い生命力を生み出すのです。
生物多様性は自然の掟。このような森は、自ずと永年存続します。森全体の生きようとする意志が、私たちを守ってくれるのです。

祈り4
祈り5
祈り6

いのちを守る森を共に育て、自然と共生する礎に

「いのちを守る森の防潮堤」に必要な樹木。その苗木を、私たちは土地本来の樹木のドングリから育てています。
2~3年の育苗を行い、植樹する。20~30年後、やがてそこは立派な多層群落の森となることでしょう。津波災害時には緑の壁となり、津波を砕き、百年後、千年後の子孫に誇り、感謝される自然の防潮堤となってくれることでしょう。自然にあるべき森には、仏教でいう「自利利他」、つまり自らを利して他を利する精神が躍動しています。
自然とは本来、厳しい環境であり、自然と共生することは自らを厳しい環境に委ねること。仏教とは自然との共生を標榜しており、その方向性を見いだすことが、実は私たちを守ってくれることにつながっているのです。

森の防潮堤1
森の防潮堤2
森の防潮堤3
森の防潮堤4
森の防潮堤5
森の防潮堤6